磁気浮上推進システムの磁気車輪のサイズに関しての検討

 


2022年5月4日
2022年5月10日
2022年7月25日

関西大学システム理工学部 
電気電子情報工学科 

超高周波工学研究室 教員 佐伯 拓


磁気車輪のサイズと構造についての検討を本格的に行っている。

磁気車輪を用いた浮上方式について、3次元での磁気及び渦電流分布の計算が過去行われたが、残念ながら金属中、特に厚み方向に関して、どのように渦電流と磁場が発生するかについての研究成果は知る限りない。

たしかに3次元ではより詳細な状況がわかるかもしれないが、我々は、2次元での金属板中における磁場と電流の計算機シミュレーションに関する多くの計算を行い、本質的な現象についての特性の理解を優先した。その結果、今まで明らかにされていなかった特殊な特性があることが数値解析の結果から明らかとなった。
これらの検討結果については、1部学会で報告済みであるが、今後、順次同様に学会等を通じて報告していく。

1)永久磁石が回転することで発生する浮上のための金属中での電磁波の進入厚みは、その周波数により決まる。
つまり、通常の電磁波における表皮効果による進入長で決まる。よって、金属板をどれだけ厚くしようが金属板表面での上部しか利用されない。
浮上力を増加させるため金属板を単純に分厚くするだけの設計では効率(金属板利用率)が悪い。
また、金属板厚みを増やしそれで全厚み領域で渦電流を発生できたとしても発熱量が多くなり、レールが高温化する問題がある。
実際に発熱による抵抗率増加のため浮上力の低下が観察されている。


磁気車輪のサイズと回転速度、すなわち、磁石移動速度を最適化する必要がある。 
その時、2つの視点、1)磁気車輪の浮上力の確保と、2)単位消費電力辺りの浮上力(N/W)の観点からの設計が必要である。

上記の効率(単位消費電力辺りの浮上力(N/W) )とは、要するに磁石が発生させる垂直方向の磁束をどれぐらいの割合で、水平方向に曲げることができるかで決まる。


2)磁気車輪は、小さくなればなるほど単位消費電力辺りの浮上力(N/W)が悪化する。
この場合、実行的に発生する電磁波の周波数が高くなり、浮上に必要な金属板の厚みは減少する。磁気車輪4.5cm8極の場合、銅板を使用した場合、表皮深さは3mm程度である。

これについては、実験および理論で確認済みである。磁気車輪を多く複数設置して浮上力を稼ぐ様な設計は、良くない設計方針である。できる限り、磁気車輪の大型化が望まれる。この上記記述の効率重視の視点は、より大型な大重量の装置を浮遊させる装置を開発するためには、現状では消費電力が大きすぎるので、消費電力を下げないといけない、という考え方だと思う。

電源は商用電源か?
リチウムイオン電池は、100C等大電流を出力できる。ただし、その分動作時間は短くなる。


3))磁気車輪の大型化に伴う特性変化
 浮上力を増加させるため、磁気車輪を大型化すると、設計上磁石間の距離が長くなる。その結果、単位消費電力辺りの浮上力(N/W)が大きくなる。
しかし、この場合、実行的に発生する電磁波の周波数が低くなり、浮上に必要な金属板の厚みは増加することになる。
 磁気車輪の駆動に必要なパワーは増加するが、半径が大きくなると相対的な磁石の移動速度が増加するため、低い回転速度で効率が最適状態となり大きな浮上力が得られる。
 磁気車輪の駆動に使用するモータのトルク特性が大切で、高トルク_低回転仕様のモータが必要となる。
この条件を満たさないと、単位消費電力辺りの浮上力(N/W)を高くすることはできない。

推進力の発生に関しては、別の箇所で述べたい。



発表論文
T. Saiki, K. Ino, M. Inada,
“Optimization on Pole Pitch of Magnetic Wheels and Thickness of Metal Plate for Floating and Propulsion System using Permanent Magnets”,
Journal of Electromagnetic Waves and Applications, 36 2022, in press.